どうもこんにちは! NPO法人地域知見LIVE 理事長の 筧田 聡 です。
うちでも、猫を飼っていました。猫と暮らしていると、ゴロゴロは毎日のように聞く音です。あの音がどうやって出ているのかは、まだ解明されていない。そう知ったのは、子どものころでした。
そのころ、デアゴスティーニの『週刊そーなんだ!』を買ってもらっていて、食い入るように読んでいた記憶があります。
その「まだ分かっていない」が、2023年に動いていました。調べてみると、気になったのはその先です。なぜ、こんなに身近な音が、今まで分からなかったのか。今回の記事は、子どものころから引っかかっていたこの問いを、論文までたどってみたというお話です。
先に答えを言うと
説明はあった。けれど約50年、誰も別の道で確かめていなかった。
1972年から「脳が喉の筋肉を細かく動かして鳴らしている」という説明が有力でした。決め手がないまま、その説明が通ってきました。2023年、取り出した猫の喉に空気を通すと、脳の指令がなくてもゴロゴロと鳴りました。
ゴロゴロは、脳が鳴らしているの?
- ゴロゴロは、脳からの指令で喉の筋肉が1秒に20〜30回ふるえて鳴る
- だから、猫が自分で「鳴らそう」として鳴らしている
取り出したのどに、息を通してみたら?
筋肉の記録は、1972年に取られていた。 RemmersさんとGautierさんが、ゴロゴロ中の猫の喉の筋肉の電気信号(筋電図)を記録し、ゴロゴロと同じリズムで筋肉が動いていることを示しました。ここから「脳のリズムが筋肉を動かして鳴らす」という説明が広まります。
2023年、取り出した喉で確かめた。 ウィーン大学のHerbstさんらは、病気のため安楽死となった猫8匹の喉頭(声を出す器官)を、飼い主の同意を得て使いました。空気を通すと、8本すべてが、ゴロゴロと同じくらいの低い周波数(25〜30Hz前後かそれ以下)で、ひとりでに震えました。脳の指令も、筋肉の動きもない状態です。
声帯の中に、かたまりがあった。 調べると、声帯の中に、最大で直径4mmほどの結合組織のかたまりが埋まっていました。年齢や性別に関係なく見つかります。このかたまりが、小さな声帯をゆっくり大きく震わせる役をしていると考えられています。
ただし、論文自身も旧説を否定しきっていません。1972年の説明には「直接の証拠は乏しい」と書きつつ、「完全に退けるものではない」とも書いています。しかも実験は、吐く息だけでした。猫は、吸う息でもゴロゴロ鳴らします。生きた猫では、脳の指令と、息による受け身の震えが組み合わさっているのではないか。論文は、そう仮説を示した段階です。
なぜ50年も、分からなかったの?
- 有力な説明が、もうあったから。筋肉がゴロゴロのリズムどおりに動いている記録があれば、「それで鳴っている」と読むのは自然です。説明がある問いは、急いで解く問いではなくなります
- 体の大きさに合わない音だったから。声帯は小さいほど高い音になります。数キロの猫が、人の話し声より低い音を出す。受け身の震えでは無理で、筋肉で叩いているはずだ。そう考えるほうが、むしろ筋が通って見えました
- くつろいだ猫の喉は、のぞけないから。ゴロゴロは、くつろいでいるときに出ます。喉に器具を入れれば、くつろぎは終わります(おそらく)。そのうえ、取り出した喉で確かめるには、安楽死となった猫と飼い主の同意が要る。材料がそろいにくい研究でした
で、結局どっちなの?
| 1972年からの説明(筋肉説) | 2023年の実験(息の説) | |
|---|---|---|
| 震えを作るもの | 脳のリズムで動く喉の筋肉 | 息の流れで受け身に震える声帯 |
| 脳の指令 | 1回ごとに要る | なくても鳴る |
| 低い音の理由 | 筋肉で叩く速さ | 声帯の中のかたまり |
| 確かめ方 | 生きた猫の筋電図 | 取り出した喉に空気を通す |
| 残る穴 | 直接の証拠が乏しい | 吐く息だけ・生きた猫ではない |
どっち向きか。「脳が1回ずつ鳴らしている」とは、もう言い切れない側です。ただ、「息だけで鳴っている」とも言い切れません。定説が倒れたのではなく、揺らいだ。私はそう受け止めています。
説明があると、謎は残る?
猫のゴロゴロには、50年間、有力な説明がありました。だから、別の道で確かめる人が少なかったのかもしれません。
謎は、説明がないときより、それらしい説明があるときのほうが、解けにくいのかもしれません。
身の回りの「昔からそう説明されている」ことのうち、最近、誰かが確かめ直したものは、いくつあるでしょうか。
子どものころ「まだ分かっていない」と知った音は、大人になった今、「説明はあったが、確かめきれていなかった」音に変わりました。それでも、答えはまだ途中です。今の子どもたちが読む本にも、ゴロゴロの説明は載っているはずです。その説明も、いつか誰かが確かめ直すのでしょう。
おまけ|獣医さんは、ゴロゴロに困っている
診察で心臓の音を聴くとき、ゴロゴロは雑音になります。2025年、オランダの獣医師が、診察した582匹のうちゴロゴロが出た51匹で、聴診器を当てながら喉頭を下から軽くつかむ方法を試し、89%で止まったと報告しました。止める場所も、やはり喉でした。
「撫でる手を止めると止まる」「病院でもゴロゴロ言う」。おうちの猫のゴロゴロの思い出、ぜひ聞かせてください。
ご意見・激励等ございましたら、気兼ねなくおっしゃってください!
ご覧いただきありがとうございました。
阿見町の筧田がお送りしました。
参考資料
- Herbst CT, et al.「Domestic cat larynges can produce purring frequencies without neural input」Current Biology, 2023(原著PDF)(猫8匹の喉頭・神経入力なしで自励振動・声帯内の最大4mmの結合組織・旧説は直接の証拠が乏しいが否定しきらない・吐く息のみ)
- 米国議会図書館「Why and how do cats purr?」(ゴロゴロは吸う息・吐く息の両方で出る・Remmers and Gautier 1972)
- Sci.News「Domestic Cats Produce Purring-Like Sounds Differently than Previously Thought」2023年10月(2023年10月3日公開・約50年前の筋肉説)
- Vliegenthart T, Szatmári V.「A New, Easy-to-Learn, Fear-Free Method to Stop Purring During Cardiac Auscultation in Cats」Animals 15(2), 2025(582匹中51匹でゴロゴロ・喉頭を下からつかむ方法で89%停止)
















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