どうもこんにちは!
NPO法人地域知見LIVE 理事長の 筧田 聡 です。
「日本人は、BMI27くらいが一番長生きらしい」
そう聞きました。標準は22のはずです。なぜ、太めのほうが長生きするのか。
私はいま、目標まであと9.5kgの減量中です。その身には、ずいぶん都合のいい話でした。
同時に、疑いも湧きました。小金持ちほど少し太っていて、いい医療を受けているから長生きしているだけではないか。
都合のいい話ほど、確かめてから信じたい。原典に当たりました。
結論
「27が一番いい」は言い過ぎでした。ただし「22を目指せ」も、日本のデータでは根拠が弱い。
中高年の日本人で死亡リスクが低いのは、BMI21〜27という幅です。一点ではありません。
その幅の中で、私が狙うのはBMI23前後(身長165cmで62kg)。病気になりにくさと、病気と戦う体力を両取りできる位置だと考えています。
よく言われている説明
- 標準体重はBMI22。これが最も病気になりにくい
- ところが統計では、小太り(25〜27)の人が最も長生きしている
- だから、多少太っているほうが得だ
おおむね、こう説明されています。
調べたら、3つに割れた
「27が一番」ではなく「21〜27はほぼ横ばい」
日本の7つの大規模コホート研究を束ねた解析があります(Journal of Epidemiology、2011年)。対象は353,422人。平均12.5年追跡し、その間に41,260人が亡くなりました。
結論は「死亡リスクが最も低いのはBMI21〜27」。
BMI23〜25の人を1.00としたときの、死亡リスクの比(ハザード比)はこうです。
| BMI | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 14〜19 | 1.78(高い) | 1.61(高い) |
| 19〜21 | 1.27(高い) | 1.17(高い) |
| 21〜23 | 1.11(高い) | 1.03(差なし) |
| 23〜25 | 1.00(基準) | 1.00(基準) |
| 25〜27 | 0.94(低い) | 1.04(差なし) |
| 27〜30 | 1.07(差なし) | 1.08(高い) |
| 30〜40 | 1.36(高い) | 1.37(高い) |
「高い」「低い」は、統計的に意味のある差(有意差)が出たものです。
たしかに、男性で一番低いのは25〜27でした。確認できた範囲では、「小太りが一番長生き」という通説と形が合うのは、この0.94です。
ただ、差は6%。女性の25〜27には差が出ていません。高い側で有意に上がるのは、男性では30〜40だけ。女性は27〜30から少し上がります。
「27が最適」ではなく「21〜27はどこも似たようなもの」と読むのが正確です。
より新しい、13のコホート研究・179,987人の統合解析(Journal of Epidemiology、2019年)では、最もリスクが低い帯は22.0〜24.9と、やや狭く出ています。研究によって底の位置は動きますが、「20台前半から半ば」という場所は共通しています。
痩せ側のリスクのほうが大きい
同じ2011年の解析で、グラフは「逆J型」を描きました。太りすぎより、痩せ側で死亡リスクが上がる幅のほうが目立ちます。
JPHC研究(40〜59歳の男女約4万人・10年追跡)でも、BMI23未満の男性は死亡率が高く、その男性は全体の44%を占めていました。BMI27以上の男性は11%です。日本の中高年男性にとって、数の上では「太りすぎ」より「痩せ気味」のほうが大きな問題でした。
欧米の研究では、逆に太りすぎ側の上昇のほうが際立つとされています。輸入された健康常識をそのまま当てると、向きを読み違えます。
「痩せているから亡くなる」のか「亡くなるから痩せている」のか
ここが最大の論点です。がんや心不全が潜んでいる人、老いが進んだ人は、そもそも太れません。すると「痩せている人が早く亡くなった」というデータが出ます。実際は「亡くなるような状態だったから痩せていた」。統計の世界で、逆の因果関係と呼ばれる罠です。
研究者もこれは承知で、手を打ちます。調査開始から5年以内に亡くなった人を除く。男性では、たばこを吸わない人に絞る。こうして「すでに病気だった人」を洗い落とします。
2011年の解析は、この操作をしても結果は同様だったと報告しています。論文本文によれば、多くの数字は弱まったものの、差は残りました。65〜79歳の26,747人を平均11.2年追った別の研究(JACC研究)でも、3年以内に亡くなった人を除いて、結果はほぼ同じでした。痩せ側のリスクは、逆の因果関係だけでは説明しきれません。
ただし、無傷ではありません。5年以内に亡くなった人を除くと、男性25〜27の0.94は0.96に縮み、統計的な差ではなくなりました(95%信頼区間0.91〜1.01)。
「25〜27が一番」という細かい順位は、逆の因果関係を洗うと残りません。ここまでが、正直な読み方です。
「お金持ちだから長生き」説も確かめた
私が疑ったのは、「小太り=お金に余裕がある=いい医療を受けられる=長生き」というつながりでした。分解すると、つながりません。
| 前提 | 確かめた結果 |
|---|---|
| ①所得が高いほど長生きする | そう言われることが多い(今回は深追いしていない) |
| ②日本の高所得層は小太り | 成り立たない。むしろ逆 |
| ③統計は所得の影響を除いていない | 所得そのものでは補正していない。補正したのは年齢・地域・喫煙・飲酒・高血圧と糖尿病の既往・運動 |
②の中身です。平成26年の国民健康・栄養調査では、肥満の割合は世帯所得200万円未満で男性38.8%・女性26.9%。600万円以上(男性25.6%・女性22.3%)より有意に高く出ました。低所得層のほうが太っていたのです。
ただし年によって動きます。差が出たのは、平成22年=女性だけ、平成26年=男女とも、平成30年=差なし、令和4年=女性だけ。
しかも平成26年の低所得層は、摂取エネルギーがむしろ少ない(男性で2,053kcal対2,180kcal)。穀類が多く、野菜や肉が少ない。食べ過ぎではなく、中身の偏りです。
②が崩れた時点で、この仮説はつながりません。
③の穴も、おそらく小さい。低所得層のほうが太っているなら、所得を補正しない分、太め側はむしろ不利に出るはずだからです。ただし、各研究が始まった当時の所得と体型の関係までは確かめていません。
ただ、副産物がありました。健診を受けていない人の割合は、平成26年では男性が世帯所得600万円未満の2区分で、女性が200万円未満で、600万円以上より有意に高い。平成30年の調査でも、200万円未満で有意に高く出ています。
所得の差は、体型よりも「病気が見つかるかどうか」のほうに、毎回出ています。
どこを目指すか
| 目標 | BMI | 165cmでの体重 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 22(標準体重) | 22.0 | 59.9kg | 教科書どおりに置きたい人。ただし維持の負担が大きい |
| 22〜24 | 22.0〜24.0 | 59.9〜65.3kg | 現役世代。病気のなりにくさと、病気と戦う予備力の両取り(私の目標=62kg) |
| 25〜27 | 25.0〜27.0 | 68.1〜73.5kg | 高齢期の許容帯。65〜79歳の研究では20〜30未満の広い範囲が最低リスクで、この帯もその内側 |
| 30以上 | 30.0〜 | 81.7kg〜 | 該当なし。男女とも、ここははっきりリスクが上がる |
年齢によって、許される幅が動くのがポイントです。
「高齢者は25〜27が最適」という説も見かけます。ただ、その出所は一次資料では確認できませんでした(4つのAIに調べさせても特定できず、通説の可能性が高いと見ています)。確認できたのは、65〜79歳では20〜30未満という帯そのものが広がる、というところまでです。
歳を重ねるほど「この範囲なら大丈夫」の幅が広がる。そう受け取るほうが正確です。
次に誰かが「BMI27が一番長生きらしいよ」と言ったら、「それ、何歳の、男女どっちの話ですか」と一言返せます。一点の数字は、それだけで幅に戻ります。
一段深いところ
BMIは「体重÷身長の2乗」でしかなく、筋肉と脂肪を区別しません。同じ63kgでも、中身が筋肉か脂肪かで意味は正反対になります。
2011年の解析自身も、限界として「腹囲やウエスト・ヒップ比のデータがない」「身長・体重は自己申告」「一時点しか測っていない」を挙げています。同じBMIの中で筋肉量をそろえて比べた日本人の研究は、今回の範囲では見つけられませんでした。
そうなると、次の問いはこうです。「BMIいくつを目指すか」より、「同じBMIの中で何を増やし、何を減らすか」のほうが本題ではないか。
次は、ここを扱います。
おまけ|肥満の入口と、死亡リスクの底
健診で「肥満」と判定されるのは、BMI25からです(日本肥満学会の基準)。
一方、2011年の解析で男性の死亡リスクが一番低かった区分は、25〜27。
肥満の入口と、男性の死亡リスクの底が、同じ場所にありました。判定の線と、長生きの線。少なくとも、同じ一本ではないようです。
このシリーズの前回は、「コーヒーは水分にならない」、落ちていた4つの条件です。こちらも、通説が条件を落としていました。
間違えたら、書き直します。
ご意見・激励等ございましたら、気兼ねなくおっしゃってください!
ご覧いただきありがとうございました。
阿見町の筧田がお送りしました。
参考資料
- Journal of Epidemiology「Body Mass Index and Mortality From All Causes and Major Causes in Japanese: Results of a Pooled Analysis of 7 Large-Scale Cohort Studies」(2011年・21巻6号・353,422人/ハザード比の表/5年以内の死亡を除いた分析)
- 国立がん研究センター「肥満指数(BMI)と死亡リスク」(上記論文の日本語解説/欧米との違い/研究の限界)
- 国立がん研究センター「肥満指数と死亡率との関係について」(JPHC研究/BMI23未満の男性44%・27以上11%)
- Journal of Epidemiology「Association Between Body Mass Index and All-Cause Death in Japanese Population: Pooled Individual Participant Data Analysis of 13 Cohort Studies」(2019年・179,987人/最低リスク22.0〜24.9)
- Obesity「BMI and all-cause mortality among Japanese older adults: findings from the Japan collaborative cohort study」(2010年・65〜79歳26,747人/20.0〜29.9が最低リスク)
- JACC「日本の高齢者における肥満度と総死亡との関連」(上記論文の日本語解説/3年以内の死亡を除いた検討)
- 厚生労働省「平成26年 国民健康・栄養調査結果の概要」(所得別の肥満・摂取エネルギー・健診未受診)
- 厚生労働省「平成22年国民健康・栄養調査結果の概要」(所得と女性の肥満)
- 厚生労働省「平成30年『国民健康・栄養調査』の結果」(所得と健診未受診/肥満は差なし)
- 厚生労働省「令和4年 国民健康・栄養調査結果の概要」(所得と女性の肥満)
- 日本肥満学会「肥満と肥満症について」(BMI25以上=肥満の判定)














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