どうもこんにちは!
NPO法人地域知見LIVE 理事長の 筧田 聡 です。
前回、日本人で死亡リスクが低いのはBMI21〜27という幅で、一点ではないところまで書きました。
すると、次の問いが残ります。同じ63kgでも、中身が筋肉か脂肪かで話は変わるはずです。同じBMIの中で、何を増やして、何を減らせばいいのか。
私は月曜から土曜まで、夕方の20分を筋トレに充てています。体組成計にも毎日乗ります。体脂肪率が0.5%動くと、その日の気分が少し変わる。
……その0.5%は、信じていい数字なのでしょうか。物差しのほうから調べました。
結論
増やすのは筋力、減らすのは腹。体重計の数字は、増減の向きを見るだけにする。
体脂肪率の小数点以下と、腹囲85cmという線は、どちらも私が思っていた意味を持っていませんでした。
よく言われている説明
- 体重より体脂肪率を見ろ。筋肉を増やして脂肪を落とせ
- 腹囲は男性85cm・女性90cmを超えるな
- BMIは筋肉と脂肪を区別しないから当てにならない
3つ目は前回のとおりです。問題は、では代わりに何を見るのか。
物差し①|体組成計は、半分しか当たらない
中高年の日本人153人(40〜78歳)で、体組成計(生体電気インピーダンス法)の体脂肪率を、DEXAという精密な測定と比べた研究があります。
DEXAの±10%以内に収まったのは、女性で45.1%、男性で47.1%。相関は女性r=0.79、男性r=0.69でした。
半分は、1割以上ずれていたことになります。
家庭用だから粗いのだろう、と思いました。ところが、研究用でも事情は変わりません。
65〜84歳の1,617人を、研究用の多周波BIA(InBody770)とDXAの両方で測った報告では、四肢の筋肉量はBIAのほうが平均1.64kg(約9.2%)低く出ました。相関はr=0.95と高いのに、です。
そして、同じ人たちを「筋肉量が少ない」と判定した割合は、BIAで38.1%、DXAで9.1%。4倍以上ひらきました。
測るたびに数字は出ます。ただ、その数字が指している場所は、機械ごとに違う。
私の目標は体脂肪率を10〜19%の帯に収めることですが、帯のどこにいるかを機械は正確には教えてくれない。だから1%を追うのはやめました。同じ機械で、同じ時間に測って、上がっているか下がっているかだけを見ています。
物差し②|腹囲85cmは、死なないための線ではない
そもそも、なぜ85cmなのか。原典に当たりました。
2002年、日本の委員会が1,193人(男性775・女性418、20〜84歳)のCT画像から決めています。まず、内臓脂肪の面積が100cm²を超えるあたりで、高血糖・脂質異常・高血圧の平均保有数が1.0を超える。そこを線にした。次に、その100cm²に対応する腹囲を計算すると、男性84.4cm・女性92.5cm。これを丸めて、85cmと90cmになりました。
つまりこの線は「ここを超えると死ぬ」ではなく、ここから病気の芽が集まり始める、という線です。測っているものが違います。
同じ研究に、もう一つありました。BMIは皮下脂肪の面積とはよく相関する(r=0.82)のに、内側の脂肪とは弱い(r=0.54)。体重を身長で割った数字は、お腹の内側をあまり見ていない。
なお、この基準の男女差については、女性の90cmは高すぎる、いや男女を入れ替えるべきだ、と学術的な議論が続いています。今回は決着を確認できませんでした。
増やす側|「量」より「力」
では、増やす側です。筋肉の量を増やせばいいのか。
群馬県と埼玉県の高齢者1,765人(平均72歳)を平均5.7年追った研究の結論は、こうでした。骨格筋量や脂肪量に関わらず、筋力・歩行能力が高いほど要介護状態になりにくい。
量ではなく、力と速さのほうが、生活を分けていた。
死亡でも方向は同じです。福岡県久山町の40歳以上2,527人を19年追った研究で、握力が上位3分の1の人の総死亡リスクは、下位3分の1を1としたとき40〜64歳で0.49、65歳以上で0.41。がんによる死亡とは関係がありませんでした。
握力は健診で測れます。歩く速さは、信号を渡るときに分かります。体組成計より、こちらのほうが素直な物差しでした。
減らす側|体重そのものを的にしない
減らす側は、慎重になる必要があります。
45〜75歳の日本人8万人を追ったJPHC研究では、5年間の体重変化を、増減2.5kg未満の人を基準に比べています。5kg以上減った人の死亡リスクは男性1.62倍・女性1.76倍。5kg以上増えた人(男性1.40倍・女性1.25倍)より高く出ました。
ただし、これを「痩せたら死ぬ」と読むと間違えます。この研究は、減量が本人の意図だったかを測っていません。病気で落ちた人が混ざります。前回書いた、逆の因果関係です。
そして、日本人で「狙って落とした減量」と死亡の関係を調べた研究は、今回も見つけられませんでした。5つのAIに手分けして探させても出てきません。「痩せるべきか」の答えは、日本人のデータとしては、まだ空白のままです。
だから私は、62kgという目標は持ったまま、見る場所をお腹と筋力へ移しました。体重は、向きだけ見る。
何を、どう測るか
| 物差し | 測っているもの | 日本人のデータ | 使い方 |
|---|---|---|---|
| 体重 | 全部の合計 | 厚い(死亡との関係は前回) | 向きだけ見る。日々の増減は追わない |
| BMI | 体重と身長の関係 | 厚い | 21〜27の幅の中にいるかの確認 |
| 腹囲 | 内側の脂肪の目安 | 基準の根拠は、危険因子の集まり | 85cm・90cmは病気の芽の線として見る |
| 体脂肪率 | 機械ごとに違うもの | ずれの実測がある | 同じ機械・同じ時間で、向きだけ |
| 握力・歩く速さ | 力と動き | 死亡・要介護と結びつく | 健診の数字を年ごとに並べる |
一段深いところ
ここまで来て、自分の中で引っかかったことがあります。
測りやすいものが、そのまま目標になっていないか。
体重計は毎朝乗れます。だから体重が目標になる。握力は年に一度しか測りません。だから忘れる。目標は、大事な順ではなく、測りやすい順に決まってしまう。
これは健康の話だけではないはずです。次は、そこを扱います。
おまけ|体組成計が一番当たるのは「ふつうの人」
体組成計の研究の結論は、こうでした。ふつうの体脂肪の人には十分に使える。ただし、痩せた人と太った人については改善が必要である、と。
毎日いちばん気にして乗っているのは、たぶん、痩せたい人と痩せている人です。
このシリーズの前回は、「BMI27が一番長生き」は、点ではなく幅の話だったです。
間違えたら、書き直します。
ご意見・激励等ございましたら、気兼ねなくおっしゃってください!
ご覧いただきありがとうございました。
阿見町の筧田がお送りしました。
参考資料
- Journal of Nutritional Science and Vitaminology「Accuracy of Body Fat Assessment by Bioelectrical Impedance in Japanese Middle-Aged and Older People」(2006年・40〜78歳153人/DEXAの±10%以内は女性45.1%・男性47.1%)
- Clinical Nutrition ESPEN「Agreement and systematic difference between bioelectrical impedance analysis and dual-energy X-ray absorptiometry for appendicular lean mass in 1617 community-dwelling older adults: The Bunkyo Health Study」(2026年・65〜84歳1,617人/平均差−1.64kg・低筋量の判定は38.1%対9.1%)
- Circulation Journal「New Criteria for ‘Obesity Disease’ in Japan」(2002年・1,193人/内臓脂肪100cm²に対応する腹囲は男性84.4cm・女性92.5cm/BMIと皮下脂肪r=0.82・内臓脂肪r=0.54)
- 東京都健康長寿医療センター研究所「高齢期の体組成・体力とその健康影響」(2022年3月4日/群馬・埼玉の高齢者1,765人を平均5.7年追跡)
- Journal of Epidemiology and Community Health「Midlife and late-life handgrip strength and risk of cause-specific death in a general Japanese population: the Hisayama Study」(2014年・久山町2,527人・19年追跡/握力上位3分の1の総死亡ハザード比0.49と0.41)
- International Journal of Obesity「Weight change and all-cause, cancer and cardiovascular disease mortality in Japanese men and women: the JPHC Study」(2010年・45〜75歳80,311人/5kg以上減は男性1.62倍・女性1.76倍)
















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