どうもこんにちは!
阿見町の筧田 聡です!
賃貸住宅『ものをもたないくらし』シリーズ、第4弾です✨
これまでは土浦市・美浦村・つくばみらい市の「物件」を視察してきましたが、今回お邪魔したのは物件ではなく、オーナー・山下さんのご自宅(茨城県取手市)。シリーズの1棟目にあたる、板倉構法の住まいです。
自然素材の賃貸を建て続ける人は、自分の家でどう暮らしているのか。ずっと見てみたかった場所です!

「ものをもたない」家に、ものがあった
お邪魔してまず驚いたのは、ものがあることでした(笑)
ペグハンマー、電動工具、本、器。
「意外と『ものをもたないくらし』って言われるんですけど」と山下さん。
話を聞いていくうちに分かりました。ここにあるのは、なんとなく置かれた物ではありません。一つひとつに理由があり、傷ごと長く付き合うと決めた物だけなんです。
持たないのは、なんとなくの物。持つのは、語れる物。
その「語れる物」を、順に見ていきましょう!

こだわり1:大谷石と、古瓦を砕いた左官の床
玄関の上がり段は、大谷石。
「大谷石は、ホルムアルデヒドとかの化学物質を吸着する能力がある。空気を浄化する能力がある」と山下さん。柔らかい石なので耐久性では劣るものの、暮らしの空間にあると趣が出る、とのこと。
足元は、古い瓦を砕いて骨材にした左官仕上げ。焼き物の失敗作なども細かく砕いて使っていて、ところどころに青い粒がのぞきます。これ、おしゃれです……!
ただ、山下さんは弱点から話してくれます。
「左官仕上げである以上、クラック(ひび)は必ず入っていく。強度なら花崗岩のほうが強い」
それでも「素足だったら気持ちがいいかもしれん」。
良いところより先に弱点を言ってくれるオーナーさん、信頼できます(笑)


こだわり2:上が抜けた空間と、薪ストーブ
天井の上の空間が抜けていて、暖かい空気が家全体に回る造り。主役は薪ストーブです。
今季はまだ火を入れていないそうで、「火を入れるときに体験してみたら」と誘っていただきました。私が薪ストーブを生で見たのは子どもの頃以来。寒い朝、この家で薪がはぜる音を聞くのが、今から楽しみです。



こだわり3:道具は「好き」を隠さない
「やっぱり、ツールがお好きなんですよね?」と聞くと「そうそう、実は」。見せてくれたのが、sanzoku mountain(サンゾクマウンテン)のペグハンマーです。トラ柄・オルテガ柄・和柄・スパイダー柄と、柄違いが並びます。キャンプブームの頃は、なかなか手に入らなかったそうです。
持ち比べてみると、素材によって光沢がまるで違う。私も以前は金型の設計をしていたので、表面の違いには思わず見入ってしまいました。

電動工具はHiKOKI(ハイコーキ)派。
「営業はマキタがすごくうまい。でも、バッテリーの互換性とかを考えたら、俺はHiKOKIのが圧倒的」
選ぶ理由を、言葉にして持っている。これが山下さん流です。
こだわり4:い草の寝床と、七島藺・月桃の座布団
寝床はい草。産地として知られる熊本県八代のい草です。
そばの座布団は、「琉球い」とも呼ばれる七島藺(しちとうい)。柔道の畳にも使われてきた、とても丈夫な草です。
山下さんいわく「昔、南の島からこっそり持ち出されて、大分に根づいた」。気になって調べてみると、七島藺は1660年ごろに鹿児島の島々から豊後(いまの大分県)へ持ち帰られたと伝わり、いまは大分県国東市だけで作られている希少な素材でした。こっそりだったかどうかまでは分かりませんでしたが、海を渡ってきた草であることは確かです。
さらに、沖縄の月桃(げっとう)の座布団も(写真は別)。寝転ぶ場所のまわりに、九州と沖縄の草が集まっています。



こだわり5:スダジイの床——「嫌われる色」をあえて選ぶ
床はスダジイ。どんぐりの木です。杉のような針葉樹ではなく、広葉樹のフローリング。虎柄のような木目が走ります。

目を引くのは、ところどころの黄色や黒い部分。木の中のタンニンが、割ったり削ったりしたときに表面へにじみ出てきた色です。
「白いところより、こういう黄色や黒のほうが腐りにくい。でも、黒芯って言って一般的には嫌われるんですよ」

普通は嫌われるその色を、山下さんは逆に注文しました。
「のぺっとしたのが嫌いだから、黄色いところを全部くれ、って」
こだわり6:栗の机と「勲章傷」
机は栗。細い板を6枚はぎ合わせて作ったものです。
「これはウレタン塗装だから、失敗した」と、ここでも自分の失敗から話してくれます(汗)
家具の木には、ピンホール(虫食いの穴)や、「入り皮(いりかわ)」と呼ばれる、鉈(ナタ)が入ったり獣が引っかいたりした跡が残っています。「虫が食ったピンホールのあるやつでやってほしい」と、わざと頼んだそうです。
「要は勲章傷みたいな感じ。ボクサーとかで言ったら」
傷を消すのではなく、傷ごと迎え入れる。この家のいちばんの思想は、たぶんここにあります。

こだわり7:釘を使わない桐たんす
茨城で桐といえば結城。結城市の堀江桐タンス店(総桐たんす一筋70余年・四代続く製造元)に作ってもらった桐たんすです。
釘を使わず、木と木を「あり」と呼ばれる形に刻んで組んでいます。上の段は帽子入れ。
そして驚きの仕掛け。
上を閉めると、下の引き出しがスッと開く!
それだけ隙間なく、ぴったり作られている証拠です。思わず「すごいね」と声が出ました。

こだわり8:椅子は、座って選ぶ
杉を熱で曲げて作った椅子は、熱でくっつけているので接着剤を使っていません。
見た目は同じ形の、牛革の椅子と布張りの椅子。座り比べもさせてもらいました。
「全然座り心地が違うくない?」
本当に違いました。牛革のほうが、体がすっと収まる。「ハマり感」が違うんです。

こだわり9:朽ちていくのも計算のうち
郵便受けの木部は、柿渋(渋柿の実を搾って発酵させた、昔ながらの塗料)に黒ベンガラを混ぜて塗り、その上から蜜蝋(みつろう)ワックスで仕上げています。

玄関の上の表札、鉄の文字は、バーナーで焼いた面のまま。人が触れる部分にはクリア塗装をかけ、それ以外は蜜蝋ワックスだけ。すると七色に光りながら、ゆっくり赤サビが回っていくそうです。
「最後は全部赤サビになる。でも、それでいい」

サビが嫌な人は、最初からクリア塗装にすればいい。変わっていくことを、最初から設計に入れているんですね。
表札は、高知の薪ストーブ工房から
この「ORNAMENT」の文字は、高知県須崎市で薪ストーブや鉄の暮らしの道具を手づくりしているおのストーブの作品です。鉄を叩いて仕上げた文字です。
ORNAMENTは「飾り」。ものをもたない家の表札が「飾り」とは、思わず二度見しました(笑)

賃貸の『ものをもたないくらし』の物件に掲げているステンレスの切り文字の表札も、同じおのストーブに作ってもらったものです。
ここにも、白山窯の器がありました
棚に並ぶ器の中に、この日いっしょに訪ねた取手市白山の陶芸工房「白山窯」、丸山敏郎先生の作品がありました。山下さんは丸山先生を「大将」と呼び、工房に何度も通っている大ファンです。
白山窯への訪問記は、別の記事で近日公開します。
自然素材の家を、「選べる」ものに
山下さんが願っているのは、自然素材の家が普通に選べるようになることです。
「自然素材の家に興味があっても、どうやったらいいか分からん人ばっかりじゃん。家を建てるって、ハウスメーカーに行くか、マンションを買うか、どっちかみたいな流れでしょ」
「板倉に興味がある人は、潜在的なところも合わせたら、いると思う」
自然素材の家づくりの考え方で、山下さんが好きだと言うのが神﨑隆洋さん。その著書『自然乾燥の無垢の木と漆喰で家をつくる ―家を選ぶことは人生を選ぶこと』(神﨑隆洋・神﨑隆馬 著、さくら舎、2023年)も、あわせて紹介してほしいとのことでした。
だから山下さんは、名前と電話番号を出すことにしました。
「自然素材が普及していったら嬉しい。分かる範囲であれば、随時お答えします」

自然素材に関心のある方へ(お問い合わせ)
ものをもたないくらし オーナー:山下さん
Tel:080-7056-3690
自然素材や板倉構法の家に関心のある方は、山下さんへ直接お電話ください。入居の相談でなくても大丈夫です。
最後に……
この家で耳に残ったのは、「失敗した」と「それでいい」という言葉でした。
ひびが入る床も、虫食いの机も、赤サビていく鉄も。完璧を目指して物を増やすのではなく、傷も変化も込みで長く付き合える物だけを選ぶ。山下さんの「ものをもたない」は、物を減らすことではなく、付き合い方を決めることなのだと思います。

実は私も、この10月に家を建てたばかり。素材の傷を「勲章」と呼べる暮らし方、真似したいと思いました。
あなたの家にある「勲章傷」は、なんですか?
ものをもたないくらしシリーズの情報
⚠ これまでに、土浦市・美浦村・つくばみらい市の3棟を視察させていただきました。あわせてご覧ください!
🔴 【物件視察】自然*健康*最少|ものをもたないくらし(茨城県土浦市) 🔴
🔴 【物件視察】自然*健康*最少|ものをもたないくらし(茨城県美浦村) 🔴
🔴 【物件視察】自然*健康*最少|ものをもたないくらし(茨城県つくばみらい市) 🔴
ご覧いただきありがとうございました。
阿見町の筧田がお送りしました。
P.S. 山下さん、白山窯からご自宅まで、長い時間ありがとうございました! 今回もとても勉強になりました。これからもどうぞよろしくお願いします♪
参考資料
- コトバンク(精選版 日本国語大辞典)「七島」(七島藺が1662年ごろ薩南諸島から渡来したとする記述)
- ふるさとチョイス ガバメントクラウドファンディング 国東市のプロジェクトページ(七島藺が1660年以降に鹿児島地方から豊後へ伝わった経緯・柔道畳・現在の産地)
- おのストーブ 公式サイト(薪ストーブ・鉄製品の製作)
- おのストーブ LINE公式アカウント(所在地=高知県須崎市)



















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