どうもこんにちは! 阿見町議会議員の 筧田 聡 です。
滋賀県で8月22日に予定されていた「琵琶湖三市同時花火大会」が、開催13日前に中止となりました。3会場で1万発以上、観覧席は全席有料の指定席で7,000円から19,000円。
チケットは売られていました。出店料も集められていました。そして、県への河川法の申請も、消防への書類も、警察への届出も、報道で確認された時点ではいずれも出されていませんでした。
中止そのものより、そこに至る8か月のほうが重いと考えています。
遠い県の話ですが、先にお金を払う仕組みは、どこの町のイベントでも同じです。
なお、詐欺かどうかは捜査と司法が判断することで、この記事では断定しません。扱うのは、その手前で確かめられたことです。
相談はあった、申請はなかった
報道で確認された流れは、こうです。
- 昨年12月〜今年1月 実行委員会の関係者が3市の窓口を訪問。場所も内容も未定のままで、市の担当者は「何も決まっていない状態だった」と説明。一方その1月、出店者には「振込順に出店決定」として出店料5万円の前払いが始まっていた
- 4月 滋賀県を訪問。県は、琵琶湖上の打ち上げには河川法の申請が要ると助言
- 8月5日 チケット販売を一時停止
- 8月6日朝 3市がそろってホームページで「主催・共催などに関与していない」と公表
- 8月9日 中止を発表。「必要な準備・運営体制を整えることが困難」。延期も振替もなし
実行委員会は取材に、開催する意思はあった、申請が必要なことは認識していたが、いつまでに出すのかを正確に把握していなかった、と説明しています。
行政は、8か月にわたって助言はできても、申請を出させることはできませんでした。 事前相談の段階で、手続きを強制する仕組みは用意されていません。ここが今回いちばん重い部分です。
名前は借りられる。手続きは借りられない
「三市同時」と書かれていれば、自治体が関わっていると読めてしまう。実際、市役所には「これは市の行事か」という問い合わせが集中しました。けれど、自治体名をイベント名に入れただけで公認になるわけではありませんし、「実行委員会」を名乗ることも同じです。この言葉に、法的な定義はありません。
行政の関与は、名前ではなく記録に残ります。 後援や共催の承認、そして許認可です。名前は借りられても、記録は借りられません。そしてその記録は、外から確かめられます。
数字をひとつ。許可を受けずに打ち上げられる花火は、同じ場所で1日75発までです(直径14センチ以下。さらに大きい玉には別の上限があります。火薬類取締法施行規則第49条)。1万発が、この枠に収まらないことは一目で分かります。大規模な花火大会には、煙火の消費許可、消防への届出、河川や公園など場所を使う許可が要ります。
茨城県の場合、消費許可の申請は消費日の1か月前までで、申請書には警備の配置図や、消防署へ出した届出書の控えまで添付が求められます。警備計画も消防への届出も、申請の段階ですでに求められている。だから、「申請は出ていますか」の一問が、その大会の準備がどこまで具体化しているかを知る手がかりになります。
聞く先は3つに整理できます。
- 自治体へ——主催・共催・後援をしているか
- 消防や火薬の担当へ——煙火の許可と届出は出ているか
- 河川や公園などの管理者へ——会場を使う許可は出ているか
名前だけでは分からない準備状況が、ここで見えてきます。
お金を払った人が、いまできること
この大会の販売条件では、主催者判断で中止し延期もない場合は全額返金するとされていました。まず立つのは、この契約上の約束です。取材に応じた弁護士も、詐欺であっても債務不履行(契約を果たさないこと)であっても返金の義務は生じる、と説明しています。
ただし、義務が発生することと、実際に返ってくることは別です。動く順番があります。
- 証拠を保存する——販売ページ、規約、購入完了メール、SNSの告知。こうしたページは、あとから消えます
- 請求は文面で行う——電話ではなくメールやフォームで。やり取りがそのまま記録になります
- カード払いなら、待たずにカード会社へ相談する——チケット代くらいの金額の一括払いだと、法律上の支払停止の権利は使えない可能性が高く、頼るのはチャージバック(カード会社を通じた売上の取消し)になります。申し出には期限があるため、早いほど有利です
- 出店者は損害の証跡をそろえる——振込控え、仕入れの請求書、募集資料。今回は800食分の材料を抱えた店もあると報じられています
- 相談先を早めに使う——消費生活相談は消費者ホットライン188。事業者は商工会や弁護士会へ。連絡が取れないままなら、警察への相談も選択肢です
返金は「待つ」ものではなく「請求する」ものです。
名義があっても、お金は守られない
ここまで「名義と手続きを確かめよう」と書いてきました。けれど、自分の主張を自分で点検しておきます。
岩手県陸前高田市の「三陸花火大会2025」は、市が共催者だった大会です。それでも中止後の返金は進みませんでした。共催協定で、チケットの販売と返金は実行委員会の役割とされていたからです。市は返金を繰り返し申し入れている、と説明しています。中止からおよそ1年たった今も、市のお知らせページは更新され続けています。
なぜこうなるのか。返す義務はあるのに、返す原資を用意しておく義務が、どこにもないからです。
旅行代金には、旅行業法の営業保証金という仕組みがあります。商品券や電子マネーには、資金決済法の発行保証金があります。業者が倒れても、一定の弁済が受けられる設計です。ところがイベントのチケットは、資金決済法が入場券を適用除外にしているため、規制の外にあります。
言い換えると、主催者がチケット代を何千万円集めたとしても、その一部を返金用に別の口座へ残しておく義務は、一般には課されていません。一般論として、開催前に受け取った代金を準備費に充てていく興行はあり得ます。そこに空白があります。
国の制度の話なので、町の議員がすぐに埋められるものではありません。ただ、この空白を知っているかどうかで、お金を払う前の確かめ方は変わります。そして自治体の側にも、名義の扱い方や、関与していないイベントへの知らせ方で、できることがあります。
「関係ありません」で終わらせなかった長浜市
注意喚起の文面で、感心した点がひとつあります。
長浜市は「関係ありません」で終えず、同じお知らせの中で、市が主催・共催する本物の花火大会を並べて案内していました。否定の告知は、放っておくと「この夏、花火はないのか」という誤解を生みます。そこに本物の予定を置いた一手は、真似したい仕事だと思いました。守るだけでなく、ちゃんと呼んでいる。
中止になった22日、夫婦で19,000円の席を取っていた方が「近づくにつれてうきうきしていた」と話していました。花火は、夏の終わりの音がします。その夜を思うと、少し胸が痛みます。
「このイベント、うちの町は関わっているのだろうか」と迷ったものがあれば、遠慮なく教えてください。調べて、確かめてお返しします。
ご意見・激励等ございましたら、気兼ねなくおっしゃってください!
ご覧いただきありがとうございました。 阿見町の筧田がお送りしました。
参考資料
- 滋賀夕刊新聞社「3市が異例の注意喚起」(2026年8月6日)
- 京都新聞「『琵琶湖三市同時花火大会』は本当に実施されるのか? 自治体に問い合わせ『市とは関係ない』」
- 読売テレビ報道(2026年8月10日)=実行委員会のメール回答、地元住民の証言
- ABCテレビ報道(2026年8月10日)=3市・滋賀県への訪問時期と助言内容、出店料の前払い、弁護士の法的整理
- スポニチアネックス「『琵琶湖三市同時花火』開催中止を発表 3市が関与否定」
- 陸前高田市「三陸花火大会2025中止及びチケット返金について」(更新日2026年4月30日)
- 茨城県 県南県民センター環境・保安課「火薬類取締法関係」
- 名古屋市消防局「煙火消費許可が不要な場合について」(火薬類取締法施行規則第49条の数量)
- 名古屋市消費生活センター「割賦販売法による抗弁」
- 一般社団法人日本資金決済業協会「前払式支払手段発行業の概要」
- 観光庁「営業保証金制度の概要」
- 公益社団法人日本煙火協会「花火大会開催の手引き」

















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