起業茶屋®・議事録に残したい飲み会 の開催案内 ≫

【阿見町】「電子なら紙の商品券より安い」は本当か——近隣市と事務費を比べたら逆でした(2026年8月)

どうもこんにちは! 阿見町議会議員の 筧田かけひだ さとし です。

町からの商品券5千円分、お手元に届きましたでしょうか。わが家では、ゆうパックで届いたのを妻が受け取りました。

先日、町民の方からご質問をいただきました。整理すると、こういう疑問です。

  1. なぜ阿見町は紙の商品券なのか。土浦市はスマホで受け取れると聞くのに
  2. 印刷や郵送に、いくら使ったのか
  3. 電子にすれば、その分を節約できたのではないか

同じことを感じた方は多いと思います。こうした疑問こそ、住民の側に立って調べて確かめる。それが議員の仕事です。阿見町の資料と、近隣の土浦市が公表している予算の内訳を突き合わせました。結果は、思っていたのと違いました。分かっていないことも含めて、そのまま報告します。

疑問1:いくらかかったのか

今回の事業は、国の「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」(物価高対策として国が自治体に配る、使い道指定つきのお金)を財源に、令和8年1月26日の全員協議会で示されました。

  • 商品券の額面:5千円 × 約50,300人(全町民)= 2億5,150万円
  • 事務経費:3,211万8千円  - 事務委託(阿見町商工会)1,747万6千円  - 配送委託(日本郵便)1,394万2千円  - 人件費 70万円

額面に対して事務経費は約12.8%。町民一人あたり、約639円が「配るためのコスト」です。

高いか安いかの判断は、後に回します。「なぜ紙なのか」が分かると、この数字の意味が変わるからです。

疑問2:なぜ紙で、なぜ町内限定なのか

この5千円が「配ること」だけを目的にしているなら、電子のほうが速くて便利です。それは間違いありません。

しかし町の資料には、目的が2つ書かれています。1つは物価高の影響を受けた生活者への経済的支援。もう1つは、取扱店を町内事業者とすることによる町内経済への効果です。

つまりこの5千円は、皆さんへの給付であると同時に、町内のお店にお金を届ける産業政策でもあります。

その証拠が、5千円の内訳です。今回の商品券は「全取扱店で使える2千円」と「大型店では使えない3千円」に分かれています。面倒な券種分けをしているのは、3千円分を確実に町内の中小のお店へ届けるため。「使いにくい」と感じさせるあの制限は、意図して設計されたものでした。

比べると分かりやすいのが土浦市です。土浦市は全市民に5千円分のデジタルギフトを配り、スマホをお持ちでない方や希望しない方にはプリペイドカードを送る選択制をとりました。デジタルギフトは、セブン銀行のATMで現金として引き出すこともできます。便利さは圧倒的です。そのかわり、お金が市内のお店で使われるとは限りません。

土浦市は住民の利便性を、阿見町は町内にお金を落とすことを優先した。設計思想の違いです。「近隣の市でも使えるように」というご要望が通らないのも、この設計と正面からぶつかるためです。

疑問3:電子なら安かったのか——調べたら、逆でした

はじめにお断りしておくと、比較の目的は、どちらの市町が優れているかではありません。阿見町が次に選ぶときの材料として、公表されている数字を並べます。

土浦市は事業費の積算を公表しています。「令和7年度 物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金実施計画」に、内訳がそのまま載っていました。

土浦市(デジタルギフト/カード選択制)金額1人あたり
支援金原資 5,000円×142,000人7億1,000万円5,000円
郵送料2,385万円168円
デジタルギフト発行手数料4,686万円330円
ギフトカード発行手数料2,842万9千円200円
事務局運営委託料2,501万5千円176円
事務費の合計1億2,415万4千円874円

阿見町の事務費は1人あたり約639円。土浦市は約874円です。

電子を中心に据えた土浦市のほうが、紙の阿見町より1人236円高い。しかも土浦市の人口は、阿見町の2.8倍。数が多いほど1人あたりは下がるはずなのに、逆でした。

正直に言えば、私はこの結果を予想していませんでした。「規模の大きい土浦だから電子にできた。阿見の人口では割高になる」——そういう構造だと思っていたのです。違いました。少なくとも今回比べた土浦市の設計では、電子中心にすれば事務費が下がる、とは言えませんでした。

なぜこうなったのか

土浦市の事務費でいちばん大きいのは、受け取り手段そのものにかかる費用です。デジタルギフトの発行手数料4,686万円と、ギフトカードの発行手数料2,842万9千円。合計7,528万9千円で、事務費874円のうち530円分にあたります。

全市民に配る事業では、スマホを使わない方への経路を必ず用意しなければなりません。土浦市は受け取り手段を二つ持つことを選び、その分の発行関連費が積み上がりました。電子化そのものが高いのではなく、「全員に配る」と決めた時点で、電子だけで完結させることができない。これが今回いちばんの発見でした。

一方、紙にも固有の負担があります。郵送費が1人あたり109円高く、換金や取扱店の事務が171円高い。合わせて280円です。阿見町はゆうパック便の対面受け取りで配りました。玄関先で受け取った方も多いと思います。それでも、発行関連費の530円には届きませんでした。

なお、委託費が地域内でどれだけ循環したかも、本来は確かめたい論点です。ただ、再委託先までは公表資料から追えないため、今回は比較できていません。

それでも正直に書いておくこと

この比較には、阿見町に有利すぎる点があります。

阿見町に計上された人件費は、70万円だけです。対して土浦市は、事務局の運営を2,501万5千円で外部に委託し、専用のコールセンターを10か月間開設しています。土浦市は外注しているから費用が見え、阿見町は職員が自前で対応している分が数字に出ていない可能性がある。

ご質問をくださった方は「町職員のイレギュラー作業などにどれほどの予算が使われたのか」と書かれていました。まさにここです。この論点は、今回の数字では解けていません。町に確認します。

もう一つ。受け取りの早さでは、土浦市が上です。土浦市はデジタルギフトの通知を4月に発送し、手続きをすればその日から使えます。阿見町は7月発送、利用開始は8月1日。物価高で家計が苦しい時期の3か月は、小さな差ではありません。ただしこれはデジタルを選べる方の話で、カードを希望した方への発送は6月30日から順次、配達は8月中旬ごろまでとされています。ここは阿見町とほぼ変わりません。

そして、ここに並べたのはいずれも予算の計上額であって、決算ではありません。実際にいくらかかったかは、どちらの市町もこれから確定します。

実は、町の資料の中に「答え合わせ」が載っていた

今回の交付金で町が行う事業は、商品券だけではありません。同じ資料に3つ並んでいます。

事業支援の規模事務経費
商品券配付2億5,150万円3,211万8千円(約12.8%)
水道基本料金6か月減免約9,500万円約923万円(約9.7%)
中学校給食費の無料化約4,955万円ほぼゼロ

給食費の無料化は、いま集金している仕組みを止めるだけなので、配るコストがほとんど発生しません。水道減免も、既存の料金システムに乗るので安く済みます。商品券は、券を刷り、封入し、郵送し、換金するという仕組みを一から作るので高くつく。

この3事業を見るかぎり、既存の仕組みを使える事業ほど事務費の割合が低い、という傾向がはっきり出ています。

もう1つ、大事なことがあります。交付金3億9,123万6千円は、この3事業でちょうど使い切る設計です。商品券事業では交付金2億2,506万4千円では足りず、町の一般財源から5,855万4千円を充てています。事務経費が膨らむほど、この持ち出しが増える。「国のお金だから多少高くても」という話ではないのです。

私が町に求めていくこと

「電子にすれば節約できたはず」は、少なくとも近隣の実例では成り立ちませんでした。ただしそれは、今回の選択が検証済みだという意味ではありません。使いにくさをあえて設計に入れた以上、その不便さに見合う効果があったのかを数字で確かめる責任が、町にはあります。私は次を確認・提案していきます。

  1. この事業に職員が費やした時間の実績(時間外を含む内部工数。ここが出ないと、今回の「639円」は本当の数字になりません)
  2. 電子方式の見積を取ったのかどうか。取っていれば、発行単価と初期費用の内訳
  3. 商品券の利用率と、使われずに失効した額(失効分は給付の実質的な目減りです)
  4. 町内店限定の3千円枠と、大型店も使える2千円枠の消化率の差(町内誘導が機能したかの直接の証拠になります)

今回ご質問をくださった方の「電子で節約できるのでは」という視点は、次の事業を良くする種そのものでした。商品券の使い勝手、「ここで使えたらよかった」というお店の名前——ぜひお聞かせください。次の設計に反映させる材料として、確かに受け取ります。

おまけ|500円券が2枚だけ入っている理由

お手元の商品券、6枚綴りになっています。全取扱店で使える千円券が2枚。大型店では使えない千円券が2枚と、500円券が2枚。

並べてみて気づくのは、細かくしてあるのは大型店で使えないほう、つまり町のお店で使う分だけだということです。

商品券は、おつりが出ません。たとえば650円の買い物。千円券しかなければ、350円分を諦めるか、商品券を使わず現金で払うことになります。500円券があれば、500円券と現金150円で払える。パン屋さん、お蕎麦屋さん、床屋さん。町のお店で払う金額を思い浮かべると、500円という単位の意味が見えてきます。

券種を2種類に分けるのも、額面を刻むのも、印刷と換金の手間が増えるだけで、事務としては面倒なほうの選択です。町に確認したわけではないので、ここは私の見立てにすぎません。ただ、面倒なほうをわざわざ選んでいるところに、その事業が何をしたかったのかが出ると思うのです。そう思って眺めると、あの6枚の紙が少し違って見えてきます。

ご意見・激励等ございましたら、気兼ねなくおっしゃってください!

ご覧いただきありがとうございました。 阿見町の筧田がお送りしました。


参考資料

このページを家族・友達に共有しませんか?

コメントを残す

CAPTCHA