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「コーヒーは水分にならない」、落ちていた4つの条件

どうもこんにちは!
NPO法人地域知見LIVE 理事長の 筧田かけひだ さとし です。

昼はコーヒー、夜はお酒。

……これ、血管は大丈夫なんでしょうか。

不安になって、その場でAIに聞きました。せっかくなので2つに、同じ文章を投げてみました。

片方は「どちらも利尿作用が強い。飲んだ量以上の水分が出ていくので血液の粘度が上がる。水を挟んでください」

もう片方は、水分の話を一行もしませんでした。「見るべきは1日の酒量と、週に何日飲むか」

どちらかが間違っているというより、どちらかが何かを落としている。そう思って、調べました。

結論

「コーヒーは水分にならない」は嘘ではありませんでした。ただし、条件が4つ落ちていました

1928年、被験者3人

出どころははっきりしています。1928年6月、カナダのアルバータ大学の2人が、カフェインなど3つの成分の利尿作用と、それに耐性がつくかを人で確かめた研究です。

  • 被験者は3人
  • 全員、カフェインを2か月以上断っていた
  • 飲ませたのはコーヒーではなく、成分そのもの
  • 同じ論文が、「4〜5日続けて摂ると効かなくなる」と書いている

数字を見ると、はっきりします。2か月断った状態なら、体重1kgあたり0.5mg——コーヒー半杯ぶんでも尿が増えました。ところが4〜5日続けて摂った後は、1mgを超えないと検出できない。同じ体で、効く量が倍以上変わっているわけです。

そこから100年で、4つとも落ちました。残ったのは「カフェインで尿が増える」だけ。通説は、元の話の半分を置いてきたことになります

「成分であってコーヒーではない」は、いまの数字でも裏づきます。同じ量のカフェインでも、錠剤なら収縮期血圧が4.16mmHg上がり、コーヒーなら1.22mmHg。カフェインの実験は、コーヒーの実験ではない

では、コーヒーは水分になるのか

習慣的に飲んでいる50人に、コーヒー4杯と同じ量の水を3日ずつ飲んでもらった試験があります。総体水分量も24時間の尿量も、差はありませんでした

ここで終われれば気持ちよかったのですが、続きがありました。量を一度に4〜5杯ぶんまで上げると、3時間の尿量が613mL。水は356mLです。はっきり増えている。

「脱水する」も「水と同じ」も、量を言わなければ両方まちがいになります。分かれ目は、2杯あたりと、4〜5杯を一度に、の間。私が最初に信じかけた「脱水しない」のほうも、同じ落とし方でした。

自分も、やりかけました

お酒の側にも面白い研究があります。ビールとノンアルコールビールでは尿量に差が出ず、ワインと蒸留酒だけが最初の4時間で有意に多い。ただし24時間で集計すると、その差も消える——。

と書いてから、条件を確かめました。

  • 被験者はオランダの60〜75歳の男性20人(女性は対象外と論文が明記)
  • 差が出た4時間も、24時間では消える
  • 資金の出どころに「オランダビール研究所」が入っていて、著者3人はそこの職員(利益相反の欄に明記)

数行前に「1928年の研究は条件が落ちている」と書いたばかりで、自分が同じことをやりかけていました。条件を落とすのは、他人の癖ではありません

救いは、この論文自身がきちんと書いていることです。「アルコール1gあたり◯mL失う」という有名な数字について——「1942年の推定は被験者1人のデータに基づき、アルコール濃度の記載もない」。確かめて書き残す人はいる。ただ、その一文のほうが運ばれない

血管の話に戻ると

コーヒーお酒
水分3〜4杯までは水と同じビールは差なし。度数が高いと4時間だけ
その場の血圧上がる(錠剤よりは小さい)下がる
連日だと効きにくくなる(半数には残る)朝の血圧が上がる。ただし2週目から
見る数字1日の杯数と、自分の血圧の高さ1日の量と、週に何日飲むか

補足を3つだけ。

日本人の高血圧の男性30人で、連日飲む期間の終わりには朝の血圧が4.4mmHg高く、夜は7.4mmHg低い。夜の低下は1日目から出るのに、朝の上昇は2週目から出ます。「昨日飲んだけど平気だった」は、何の情報にもなりません。

コーヒーは1日3〜5杯でいちばん死亡リスクが低い、という大規模な追跡が複数あります。ただし血圧が160/100mmHg以上の重症の方に限ると、日本人のコホートで1日2杯以上が2.05倍。「体にいい」も、条件を落とすと逆になります

そして「血液ドロドロ」。脱水で粘度が上がるのは確かですが、赤血球の濃さを補正すると差は消えました。動いていたのは粘度ではなく、赤血球の濃さです。対応する診断名も基準値も、医学の側にはありません。

水を挟むかどうかは、正直、どこにも出てきませんでした。

ついでに、「酒は百薬の長」

少し飲む人がいちばん長生きする、というあのグラフも、いま疑われています。

指摘されたのは、「飲まない人」の中身でした。病気で飲めなくなった人、薬をのんでいる人、もともと体が弱い人。そういう人がまとめて「飲まない人」に入っていたら、飲む人のほうが健康に見えて当たり前です。

そこで、生まれつきの遺伝子のちがい——お酒に強いか弱いかは、自分では選べません——を使って調べ直した37万人の研究があります。結果は、少量でもリスクはわずかに上がる方向。多く飲むほど、上がり方が急になる。

ここでも落ちていたのは条件でした。「飲まない人」とは誰なのか、という一行です。

落ちるものは、いつも同じ

面白かったのは血管の話ではなく、落ちたものがいつも同じ種類だったことです。被験者の条件。量。人数。そして「例外がある」という一文。

短く言い切れる部分だけが残るからだと思います。「カフェインで尿が増える」は一息で言えて、「2か月断った3人に成分そのものを与えると」は言えない。運ぶ途中で、重いものから落ちていく

AIの問題ではありませんでした。1928年からずっと起きていたことに、最後に乗っただけです。落とす癖のほうが、ずっと古い

次に誰かが「コーヒーって水分にならないらしいよ」と言ったとき、「それ、何杯の話ですか」と一言返せる。それだけで、100年落ち続けたものが1つ拾えます。

私がいま気になっているのは、その先です。条件を落とさずに短くするには、どうすればいいのか。これは次に持ち越します。

おまけ|同じ年、地球の反対側で

カナダで1928年6月にその研究が出た、翌月。日本でも東京帝国大学から「カフェイン利尿への耐性」という論文が出ています。同じ問いに、同じ年、別の場所で。

100年経って、両方とも忘れられ、通説だけが残りました。そこが、いちばん可笑しかったところです。


このシリーズの前回は、梅干しの天日干し、紫外線は何をしていたのかです。こちらも、通説と原典がずれていました。

ご意見・激励等ございましたら、気兼ねなくおっしゃってください!

ご覧いただきありがとうございました。
阿見町の筧田がお送りしました。

参考資料

通説の出どころ

コーヒーと水分・血圧

コーヒーと死亡リスク

お酒

血液の粘度

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ABOUT US
筧田 聡 ❀ 阿見町
NPO法人地域知見LIVE 理事長, ㈱Key-Performance 創業・代表取締役, 起業茶屋® 主催, 弓道弐段, サザン好き, 茨城県観光マイスターS級 認定「大きな愛、たくさんの笑顔、熱い情熱をもって、互いの人生を輝かせるために働き続ける!」