どうもこんにちは!
阿見町議会議員の 筧田 聡 です。
去年の夏、スーパーの前で「お米、高いね」という会話をどれだけ聞いたでしょうか。今年、その値段は下がりました。ところが産地から聞こえてくるのは、去年より重い声です。
去年困っていたのは、買う側の私たちでした。今年困っているのは、作る側の農家です。同じ「米の値段」で、困る人が入れ替わっただけ。
では、その間に上がった分は、どこへ行ったのか。調べてみて分かったのは、それを追える資料が存在しない、ということでした。この記事は、そこにたどり着くまでの話です。
町議としてではなく、一人の生活者として、そして農業を近くで見て育った者として書きます。
なお、国が持っている備蓄米については別の記事に分けました。この記事で扱うのは、市場に出たあとの米のほうです。
1|まず、二年で何が起きたか
- 令和7年産(2025年):概算金(=JAが収穫時に農家へ払う前渡し金)が多くの産地で過去最高。玄米60kgで3万円台に乗った県も
- 令和8年産(2026年):宮崎のコシヒカリ32,000円→18,000円、高知のコシヒカリ22,000円→14,000円
- 店頭:精米5kgの平均販売価格3,198円(2026年8月2日までの週)。7月は3,403円→3,373円→3,311円と毎週下がり、97週ぶりに3,200円を割りました
一年で、産地の受取額がほぼ半分になった県があります。産直サイト「食べチョク」の調査では、登録農家81人のうち、今年の概算金が提示済みだった20人の85%が「厳しい」と答えています。
2|よく聞く三つの見方を、数字で確かめる
「米が高いとき、農家は儲かっている」
JAに出荷する農家の多くは概算金の仕組みの中にいます。受取額が先に決まり、精算は後日。店頭価格が跳ね上がっても、同じ速さで手取りには届きません。同じ年に、儲かった農家と、ほとんど変わらなかった農家が同時にいました。農家によって違った、というのが正確なところです。
「JAが備蓄米を買い戻せと言い出した」
買い戻すことは、JAが求めたから決まったのではなく、放出の時点で国が付けていた条件です。制度の名前自体が「政府備蓄米の買戻し条件付売渡し」といいます。この仕組みは別の記事にまとめました。→ 備蓄米59万トン、放出して終わりではありません
「JAが米を握っている」
令和6年産(2024年)の収穫量は679.2万トンで、前年より18.2万トン増。ところが同じ年、JA系統などの集荷業者への出荷は約31万トン減り、生産者の直接販売などは約44万トン増えました(生産者641者への聞き取りからの全国推計)。米は増えたのに、従来の集荷業者には集まらなかった。「JAだけが米を握り、意図的に隠していた」という説明は、公表された統計からは支持されません。
この三つ目が、この記事の出発点になります。
3|では、その米はどこへ行ったのか
集荷業者に集まらなかった約31万トンの行き先は、生産者の直販だけではありませんでした。農林水産省の区分では「集荷業者以外の業者との取引」も増えています。高値がついた年に、産地へ入って買い集めた新しい買い手がいた、ということです。
ここは慎重に書きます。確認できるのは「新しい買い手が増えた」ところまでで、各段階でどれだけの利益が出たかは分かりません。流通量が動いたことと、誰かが過大な利益を得たことは、別の話です。
では、系統のシェアは何%から何%へ下がったのか。言えません。国が同じ定義で毎年追ってきた数字が存在しないからです。
4|国も、米がどこにあるか掴めていなかった
国はこれまで、年間500トン以上の集荷業者と4,000トン以上の卸売業者からの報告で流通を把握してきました。生産者の直販も小規模な業者も、その網から漏れていました。2025年に対象は約7万事業者へ広がりましたが、回答は約2割です。
農林水産省自身、生産量は足りるという認識のもとで流通実態の把握に消極的だったこと、備蓄米の放出が遅れたことを、反省点として整理しています。
正確な在庫も流通量も分からないまま、私たちは「高い」「安い」を議論していました。
そして分からない理由は、隠されているからではなく、測る仕組みがないからです。
私が問題だと思うのは、儲けた人がいることではありません。相場が動けばうまく立ち回る人が出るのは当然です。そうではなく、誰がどれだけ受け取ったのかを、あとから誰も検証できない状態のほうです。
去年、消費者は「高い」と怒りました。今年、農家は「安い」と困っています。その二つの怒りの間に、誰にも見えない領域がある。見えないこと自体が、この問題の本体です。
5|それでも、JAがあるから成り立っていること
「JAが握っているわけではない」と書きました。ついでに、反対側の言い分も置いておきます。ここを飛ばすと、ただの批判になってしまうので。
一つ目は、小さい農家が市場に出られるのはJAがあるからだ、ということ。乾燥調製、保管、選果、輸送、販売。これを一戸で全部やるのは無理です。まとめるから運賃が下がり、まとめるから量が揃って買い手がつく。共同で売ることで交渉力を作るのが、そもそも協同組合の役目です。
二つ目は、お金の流れです。農林水産省の総合農協統計(2024事業年度)では、信用事業+1,709億円、共済事業+992億円に対し、農業関連▲306億円、生活その他▲220億円、営農指導▲982億円。JA全体では、信用・共済部門の利益が、農業関連や営農指導部門の赤字を支える形になっています。(部門ごとの数字であって、金融から農業へ直接補填しているという意味ではありません)
民間の銀行やスーパーが採算を理由に撤退した地域で、その空白を埋めてきたのがJAだった場所も実際にあります。
私は、米作りに長く真面目に向き合ってきた農家を、近くで見て育ちました。作ることには自信を持っていた人でしたが、いくらで売れるかは手の届かないところで決まっていた。悔しさより先に諦めが来ていたのを、隣で見ていました。あれを構造の話として言葉にできるまで、私は長くかかりました。
見えるようにするために、できそうなこと
批判の話ではなく、測り方の話として書きます。
国|精米になってからの流れまで見えるようにする
対象は約7万事業者へ広がったのに、回答は約2割でした。まず、いま集まっていない8割をどうするかです。
そのうえで、把握の範囲そのものも足りていません。玄米の段階だけでなく、精米になって小売・中食・外食へ流れる段階まで見えるようにすること。ここが見えない限り、上がったお金の行方はいつまでも分かりません。
集荷・卸の事業者|まず、報告に答える
答えないことに罰則はありません。でも、答えが集まらない限り、米がどこにあるのかは分からないままです。分からないまま放出のタイミングを決めれば遅れますし、分からないまま需要を見通せば外れます。去年も今年も、そうやって外れました。
相場を読んで立ち回るのは商売です。ただ、その商売の土俵を安定させる情報を出すことまで、商売の外にあるわけではないはずです。報告の負担が重いなら、そこは国が設計を直すところ。負担が軽くなっても答えないのなら、それは別の話になります。
私たち|安さを責めない。ただ「どこから買うか」も選択肢に入れる
安い米を買うことは、まったく悪くありません。家計は家計で切実です。
そのうえで、値段だけでなく「どこから買うか」も選べる、ということは覚えておいてよいと思います。スーパーの棚、直売所、産地からの直送。どれを選んでも構いませんが、選んでいるという自覚があるだけで、米の話は少し自分の話になります。
そして、直売所や直送を選ぶ人が増えることは、それ自体が流通を分散させる動きでもあります。一本の太い管だけを見ていれば済んだ時代が終わりつつある、ということでもあります。
おわりに
去年「高い」と驚き、今年「下がった」と受け止めた私たちは、来年また同じ場所に立ちます。そのとき、上がったお金がどこへ行ったのかを追える状態になっていれば、話はもう少し前に進むはずです。
犯人を探す話ではありません。探そうにも、探すための資料が作られていない。まずそこからだと思っています。
この続きとして、あと二つ書くつもりです。ひとつは、JAを使うか使わないかを組合員が本当に選べているのかという話。もうひとつは、町にできることとして、学校給食の食材費のうちどれだけが町内に渡っているのかという話です。
お米の買い方の工夫や、「ここはいい」という直売所・お店があれば、ぜひ教えてください。次に書くときの取材先にさせていただきます。
ご意見・激励等ございましたら、気兼ねなくおっしゃってください!
ご覧いただきありがとうございました。
阿見町の筧田がお送りしました。
参考資料
米の流通・需給
- 農林水産省「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」(令和8年7月=需要実績683万トン、需給の見通し)
- 筧田「備蓄米59万トン、放出して終わりではありません|国はこれから、どう戻すのか」(備蓄制度の仕組みと買戻しの判断)
- 農林水産省「作物統計」(令和6年産主食用米の収穫量679.2万トン)
- 農林水産省 米の流通実態に関する調査(生産者641者への聞き取りに基づく全国推計=集荷業者への出荷▲31万トン、直接販売等+44万トン)
農協の経営
- 農林水産省「令和6事業年度農業協同組合及び同連合会一斉調査結果」(表6 部門別損益=信用・共済・農業関連・生活その他・営農指導の事業利益。令和8年3月27日公表)
- 農林水産省「農業協同組合及び同連合会一斉調査の概要」(調査の定義・農業地帯別区分)
生産現場
















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